令和7年度 審査結果・受賞作品
※ファイルサイズが大きいので、ダウンロードに時間がかかる場合があります。
住まいのインテリアコーディネーションコンテスト 作品全体講評
本年度の作品は、人々の「暮らし」や「ライフスタイル」の広がりを受け止めつつ、住まいに流れる空気の揺らぎや、そこに潜む気配の微細な変化に静かに耳を澄ませながら、それぞれが独自の視点とコンセプトをもって紡がれていると感じた。素材の温度、光の滲み、庭の余白、動線の柔らかな曲線――そうした繊細な手がかりを通して、住まいの奥に潜む本質へそっと触れようとする姿勢が、多くの作品に宿っていた。課題分野では、和の素材や意匠への敬意を基盤に、そこに暮らす人の価値観や物語が静かに折り重なり、空間そのものがひとつの情景として立ち上がる提案が際立った。四季の光や風が空間を巡り、伝統と現代がゆるやかに呼応していた点が印象的である。事例分野においても、クライアントの生活の芯を丁寧にくみ取り、立地や既存建物の特性と響き合わせながら、何を優先し、どこに焦点を置くかを静かに見極めるまなざしが感じられた。生活とデザインが穏やかに調和し、空間に深い余韻と厚みを与えていた。今年の作品群は、住まいとは何を受け止め、どのように育む場であるべきかという問いに、静かで力強い答えを示している。
これからの「暮らしのデザイン」とインテリア業界の可能性を強く感じることができた。
〔丹羽委員〕
◎経済産業大臣賞 講評
ファブリックスの持つ深いポテンシャルと、既存を大切に再生していく『もったいない』の心を具現化する安堵感をさりげなくデザインした秀逸な作品です。布天井を季節により変化させることで、デザインの妙、環境負荷の削減を実現。先人の知恵である季節の模様替え行事を彷彿とさせます。その懐かしさが、施主様に安心感を与えてくれるのでしょう。かつその布の織り方の特性から(タフタのように見えます)見る方向から違った色合いまさに玉虫色を楽しめる贅沢なインテリアです。また、キッチンや収納家具の手づくりの温かさ、懐かしい既存建具、下駄箱の再生、柱の既存利用、ペンダントの位置もなるほどと感じます。既存柱の色合いなどにも、丁寧な聞き取りと柔軟な設計力が光ります。全体に流れる懐かしい温かさと妖艶な色合いのリズムは、インテリアの可能性の無限さを魅せる作品として、まさにエシカルインテリアの玉手箱のような素晴らしい作品となりました。
◎製造産業局長賞 講評
本作品は、A部門の課題である「日本の伝統が宿る」というテーマに対して、和の意匠を表層的に寄せ集めるのではなく、機能性と景観を往来させる「用」と「景」の哲学、内と外が連続する日本的空間観、そして奥ゆかしさを生む「隠す美意識」など日本文化の核心を確かに捉えた点が際立っています。生活行為としての「用」を的確に満たしながら、その必然的な配置を通して「景」へと昇華していく構成は、機能美と構成美の均衡を見事に実現しています。また、室内と庭の関係性にとどまらず、自然風景を象徴的に表現する枯山水も採り入れて自然の循環にまで思考を広げ、すべてが一つにつながる日本の空間哲学を空間全体で表現している点も特筆されます。加えて、あえて全体を見せず一部を「見え隠れ」させる設えは、余白に想像を誘う日本の奥ゆかしさを的確に体現しています。さらに、精巧に作り込まれた模型と、その魅力を最大限に伝えるプレゼンシートの構成は非常に完成度が高く、作品の思想に強い説得力がありました。本年度のテーマに対し、最も本質的な回答を示した秀逸な提案です。
◎インテリア産業協会会長賞 講評
「中の外の家」という「謎々」のような魅力的なタイトルがまず目を引く。そのタイトル通り、日常空間(内)に非日常空間(外)が交互に現れるようにストライプ状に配置された壁が新鮮だ。生活空間を仕切る壁を「アートの中に入る」というコンセプトで配したアイデアは、同時にウォークインクローゼットに生活用品を収める見せる収納によって、日常品をアート同様に大切にする感覚でしゃれている。それぞれの空間は赤色と黒色で彩られ色彩の力と壁材の豊かな手触りによって特別感が演出されている。その空間づくり全てが住まう人に「エネルギー」と共に「安らぎ」を与えてくれるように思う。また四角い開口をいくつも持つことで生活空間とギャラリー空間が視覚的に混ざり合い、住まう人の個性と趣味が際立つ効果がさらに日常的に五感を刺激し育むだろう。天井の形状や光源の配置の巧みさも付け加えておきたい。雑事から離れコーヒーを手に一息つく時、外のギャラリー空間でイメージを膨らませたり展示プランを考えたりすることで、内の日常生活での明日へのエネルギーを静かに醸成してくれるに違いない。効率と正解がスピーディーに求められる今だからこそ、美しい機能性を追求したプロダクトに非日常で非効率な「アート」を参加させることでプラスアルファの面白さも味わえるこの提案は住まう人の豊かさとその熟成を促す素晴らしい、そして美しい提案だと思う。
◎インテリア産業協会会長賞 講評
日本の美意識と伝統的な暮らしの知恵を巧みに取り入れたインテリア空間が、提案されたデザインにおいて実現されている。南北に入れ子状に挿入された和空間は、家具調度や建具が作り出す日本の仮設的空間を彷彿とさせる。またそれによって住まい全体に奥行きを醸し出している。そこは日本の高温多湿な気候風土を受け入れ、四季折々の変化から生活の楽しみを導いている場といえる。北の露台は野点の場となり、虫の音に耳を傾けながら茶を楽しむ静謐な時は、自然との一体感をつくりだすであろう。躙(にじ)り口を模した低い出入り口は、日常と非日常を分かつ象徴的な仕掛けとなっている。室内空間は、天井の竹組み張りを通る柔らかな自然光で演出され、余分な装飾を排したより精神性を高めた場となっている。板の間では、床座の生活が再構築されている。囲炉裏風の場所はそれを囲む家族や客人との親密な場を作り上げるであろう。南の露台では、夏の夕涼みの文化が大切にされている。虫の音がもたらす季節の情緒が映し出されるようなインテリアコーディネーションになっていると言える。
◎部門最優秀賞
「静寂に還る家」
今福 由紀子・菊池 康仁
株式会社Aete インテリアコーディネーター事務所アエテ・株式会社e-デザイン空間/宮城県
講評
「静寂に還る家」は、施主の要望を平面プランと空間構成で見事に解決し、各素材を丁寧に選び抜いた上質なコーディネートが建物の魅力をより一層引き立てています。設計士の確かな力量を感じさせる作品です。本作品の最も際立つ点は、巧みな空間構成にあります。居室の繋がりと視線の抜け、絶妙な階段配置、効果的な吹き抜け、そして計算された採光の絞りによって、38坪以上の広がりを感じさせる空間を創出しています。また水回りをコンパクトにまとめ、回遊性が取れていることは、日常生活の動線を考慮した実用的なプランニングの証です。素材選びにも細心の注意が払われており、木の温かみを基調としながらも、各素材が互いを引き立て、調和するように丁寧にコーディネートされています。和の要素を現代的な生活様式に溶け込ませる手法は見事です。また、プレゼンはコンテストの趣旨を深く理解し、空間デザインと素材選択の関係性を明確に伝える構成となっています。強いて言えば、玄関側の外観が見られると、内外の調和やアプローチの設計についても評価できたでしょう。「静寂に還る家」というコンセプト通り、日常から切り離された静けさと安らぎを提供しながらも、機能的で美しい住空間を実現した点が、部門最優秀賞にふさわしい作品だと言えます。
HERITAGE・日本の美意識
上木 浩二・石橋 謙司・上木 崇大
株式会社クラージュプラス/広島県
講評
日本建築の美意識を活かしながら築70年の古民家をモダンに再生した優れたインテリア設計である。フルスケルトン解体によってインテリア空間が刷新され、快適性と同時に耐久性も確保されている。永きにわたって楽しめる空間が創出されており、「飽きの来ないタイムレスで遊び心もあるデザイン」というコンセプトが実現されている。室内には透過性のある組子の建具を用い、光と視線が緩やかに抜けることで、ホールからダイニングルーム、さらに庭へと続く奥行き感が生まれている。斜めに配したアイランドキッチンは、組子越しに広がる室内と庭の景色を楽しむことができ、空間に動きを添えている。ダイニングルームには全開口のサッシが採用され、庭と一体となる開放感が実現されている。自然の移ろいを室内に取り込む贅沢な設計だといえる。さらに、アートや再利用された建材を巧みにコーディネートした空間は、感性豊かな施主の個性を映し出し、訪れるゲストをも魅了するであろう。「心地良すぎて時間を忘れる」という施主の言葉に象徴されるように、この家は伝統と革新が響き合い、時を綴る特別な場所となっている。
翠光の家
有住 和華
株式会社ホリエ シエルホームデザイン/宮城県
講評
「翠光の家」は、限られたリビング空間の中に洗練されたコーディネートセンスが見事に表現された秀作です。白色の床材が生み出す開放感を基調としながら、深く澄んだ緑(翠)をメインカラーに据えた色彩構成は、現代のトレンドを的確に捉えています。グリーンのローソファをメインとして、クッション、サイドテーブル、ラグ、アート、グリーンなど、必要なアイテムをコンパクトかつ効果的に配した空間構成力に感銘を受けました。各家具の丸みを帯びたフォルムが互いに呼応し合い、バーチカルブラインドを通して降り注ぐ柔らかな光がそれらを優しく照らし出す様は、まさに「光と翠」が織りなす詩的な空間と言えるでしょう。子どもがのびのびと過ごせることを重視しながらも、洗練された美しさを両立させた本作品は、現代の住空間における「居心地の良さ」の理想形を示しています。奥羽山脈の四季の移ろいを感じる窓辺の景観と室内の調和も見事で、インテリアコーディネートの優れたお手本として高く評価いたします。
白の結庵 -和の庭にひらく家-
呂 雷明・佐藤 悠樹・占部 和樹
東京都市大学/神奈川県
講評
『白の結庵』は、課題の2つの立体をL型に配置し、それらを少しずらすことによって、四角の敷地に性格の異なる二つの庭を作り出している。「公の庭園」では伝統的な和風庭園で季節の移ろいを楽しみ、一方の「私の庭園」は石庭を思わせる静寂さを味わうことができる。さらに、内部に吹き抜けのある土間を設けることで、空間全体に連続性と変化がもたらされている。インテリアコーディネートには白を基調とする自然素材が用いられ、日本の伝統を感じられる完成度の高い作品に仕上がっている。本作品は、インテリアスタイルが和風にまとめられているにも関わらず、安易に和室をつくらず、いす座の生活を成り立たせるように工夫されている。1階のワークスペースや2階の寝室では、庭との間に縁側的なスペースを挟み、和と洋を無理なく繋いでいる。1階のリビングでは、床が低くなったところにソファがあること(ピットリビング)により、視覚的に空間に奥行きと広がりを生み、床の段差はリビングのくつろぎスペースを自然に区切る役割を担っている。また、視線を下げることで、和室に座って庭を鑑賞する目線の高さで、和風に作られた公の庭園を眺められるように設計されている。
海の見える丘に建つ軒の深い家
平井 進
平井進建築研究所 一級建築士事務所/山梨県
講評
テーマは『和を楽しむ空間』であり、雁行する平面をどのように活かすかが重要である。本作品は、良い意味で期待を裏切るユニークさがあり、伝えたい内容がのびのびとした表現で明確に伝わってくる。南側は趣味の部屋(茶道と花道)と広い土間のギャラリーからなる「和を楽しむ空間」、北側はリビング・ダイニング・キッチンと和室の寝室からなる「日常生活を行う空間」とし、ブロックごとに公と私を割り当てて明快にゾーニングされている。土間、居室、寝室(和室)には、それぞれ異なる床レベルが設定され、目線が同じ高さになるように工夫されている。また、浴室を含む主要な部屋がすべて海に面したロケーションの設定が良く、それぞれの部屋から海が見える居心地の良い空間となっている。特筆すべきは、趣味の部屋の入り口が茶室の「にじり口」風に内のりが低く設定されている点で、頭を下げて入ってきた客が頭を上げた瞬間、海への視界が広がる心憎い演出がなされている。外観は、シンプルな切り妻屋根で二つの棟をきれいに繋ぎ、軒の深さがさりげなく和をイメージさせる美しい佇まいである。仕上げ素材の選択もモダンで和を感じるインテリアにまとめられている。

















